なぜ働いていると本が読めなくなるのか
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書誌情報
なぜ働いていると本が読めなくなるのか
author: 三宅香帆
publisher:
publish: 2024-04
感想
16:37 なぜ働いていると本が読めなくなるのかを読みはじめる。世評の高さや、見たことのある名前ばかり並ぶ参考文献欄をみて、読むモチベーションがなくなっていた。だが読みはじめると面白い。 叙述の基本はオーソドックスな労働史だ。それにくわえて文学研究者の視点を活かして、その時代の文芸作品から世相を読み取っていく。そのバランスがよい。
80年代 女性が担い手に。
90年代 新自由主義の内面化。自己啓発はノイズの除去
00年代 仕事がアイデンティティになる時代
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2010年代 労働小説の時代
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キーワード 世相 階級 読書と他の娯楽の関係性 教養 自己啓発 ノイズ タイパ 自己実現 シリアスレジャー 推し活 半身で働く 疲労社会 トータル・ワーク
17:14 読み終わりました。結論は耳にタコができるほどきいた新自由主義批判にちかいところがある。でもそれを、書き出していく過程の面白さがこの本にはある。気がする。
感想
読書と労働に関する歴史的経緯が中心。社会学者による、自己啓発に対する分析にも目配りがある。その時代の作品から時流を推測するところは著者自身のセンスだろう。現代社会において、読書は「タイパの悪いメディア」だと考えられているのではないか。筆者はそう述べる。たしかにただ情報めあてなら、ノイズが多すぎる。こんなものに血道を上げていたら、競争社会では通用しないかもしれない。だが、なぜそんな競争に参加させられているのだろうか。著者はその理由を、仕事における成功こそが自己実現であると考える世相にみる。情報源としてはブログやYoutubeにおとるとみなされ、娯楽としてはスマホゲーに負ける。この本は、読書の衰退の歴史を克明にしるしている。なんとなくマゾヒスティックな選民主義をくすぐられるような気がする。筆者は結論で、「半身で働く社会」を提唱している。この手の、「過熱する競争からおりて、ゆとりのある社会にしよう」系のスローガンはいろいろな本で見る。同じような結論にいたる本の中では、わたしは『依存症と回復、そして資本主義』が好ましい。 (読書メーターに投稿)
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