カール・ポランニーの経済学入門
ToC
書誌情報
title: カール・ポランニーの経済学入門
author: 若森みどり
publisher: 平凡社
publish: 2015/08/11
今よみがえるポランニーの思想には、「人間のための経済」への想像力がある。民主主義を犠牲にしてまで経済効率が優先される現代世界の状況を警告したその思索をたどり直し、ポスト新自由主義時代を見据えた「人間の自由」を問う。市場システムへの自発的隷従という呪縛を解き、産業文明における良き社会の可能性を探る一冊。はじめに──よみがえるポランニー
第一章 カール・ポランニーの生涯と思想破局の時代を生きたポランニー/ハンガリー時代(一八八六─一九一九)ウィーン時代(一九一九─一九三三)/イギリス時代(一九三三─一九四七)北アメリカ時代(一九四七─一九六四)/新たな研究テーマ──産業社会は自由でありうるか
第二章 市場社会の起源
──産業革命と自己調整的市場経済というユートピアの誕生
1 居住か、進歩か──産業革命がもたらした社会的混乱と文化的破壊産業革命と市場経済システム/産業革命と囲い込み運動の比較市場経済の導入と文化的破壊/経済的自由主義に利用される産業革命史
2 救貧法論争と経済的自由主義──貧困と失業がなくならないのはなぜか飢えによる労働市場の自己調整──マルサスの救貧法批判の論理救貧政策は意図に反して貧困を増やす、という逆転的命題の説得力市場経済に取り込まれた自然、宗教と経済的利害との分離
3 なぜ飢える隣人を助けるべきではないのか救貧法とキリスト教的共同体/キリスト教による市場システムの肯定
4 市場社会における経済的自由主義への対抗論理オウエンによる「社会の発見」/オウエン的社会主義と社会改革
第三章 市場ユートピアという幻想
──経済的自由主義の欲望と社会の自己防衛
1 市場ユートピアという欲望市場経済、市場社会、自己調整的市場/商品擬制と市場経済の制度的本質経済的自由主義の実現不可能な欲望
2 なぜ市場の拡大は社会的保護を伴うのか商品擬制と二重運動/社会の自己防衛と共同社会の全体的利害社会的・文化的破局と社会保護
3 二重運動──経済的自由主義 対 ポランニー二重運動の解釈をめぐる対立/経済的自由主義の自己矛盾
第四章 劣化する新自由主義
──繰り返される市場社会の危機、無力化される民主主義
1 市場社会の危機、民主主義の破壊、ファシズム金本位制とその破壊的影響から生まれた保護主義──二重運動の新たな局面国民的通貨、経済的帝国主義、第一次世界大戦再建金本位制のもとでの二つの介入主義の対立──市場ユートピア的試みの失敗世界経済・市場文明の崩壊とファシズム、ニューディール、社会主義平和は市場システムの従属変数であった──経済的自由主義とファシズム市場社会の危機のなかで民主主義と自由の諸力がいかにして奪われたか
2 市場社会を支える哲学は、危機についてどう解釈したのかリップマンの『良き社会』と新自由主義の誕生/「赤いウィーン」をめぐる対立する解釈経済的自由主義のユートピア的試みの致命的な失敗が危機をもたらした
3 劣化する新自由主義と無力化される民主主義一九世紀的市場経済の危機と新自由主義の理念──モンペルラン会議新自由主義における多様性の喪失──市場原理主義への収斂東西冷戦終結後の新自由主義的経済社会改革から現代の危機へ
第五章 市場社会を超えて、人間の経済へ
1 晩年のポランニーの挑戦──ポスト『大転換』の枠組みを求めて市場社会からの転換──普遍的資本主義 vs. 多様な民主主義の可能性第二次世界大戦後の新たな市場社会分析
2 経済社会学の問い経済(的)の二つの意味/市場社会の経済社会学的分析/経済主義的文化に対抗する
3 アリストテレスの経済倫理良き生活と中庸/等価と正義/「自然的」な政治秩序と経済の制度化
4 社会における経済の位置を問う──互酬・再分配・交換互酬・再分配・交換という三つの統合形態/貨幣の制度主義的分析
5 古代ギリシャの三つの命題──ヘシオドスとアリストテレスの対照からヘシオドスの経済思想──鉄の時代におけるマルサス主義の誕生アリストテレスの制度の経済思想
6 民主主義によって市場経済を超える──ポランニーの倫理的社会民主主義
終章 人間の自由を求めて──ポスト新自由主義のヴィジョン
1 複雑な社会における人間の自由とは「自由のための計画」をめぐって/イギリス版『大転換』以降の自由論の三つの要点
2 社会的自由
3 社会の現実と制度改革──世論と政治領域を取り戻す
4 良き社会をめざして三つの基準線/悪しき社会と良き社会
註あとがき
参考文献索引
読書メモ
2025-05-14
- ガリレイ・サークル
- 1908年に、ポランニーによって創設された。進歩思想を普及するための教育組織。ルカーチやマンハイムなどが参加した。
- 赤いウィーン
- これは試される民主主義20世紀ヨーロッパの政治思想(上)でも見たな。
- 人間の経済読みたいな
- 産業社会における良き生活とはなにか #asklist
- 最晩年のポランニーの研究 ルソーの思想「普通の人々の生活様式としての文化」
- 人間の自由と社会的責任への関心p42
- [ ] 大転換の主題は
- リカード時代のイギリス
- スピーナムランド制度
- この制度に関する、救貧法論争が社会意識を形成した。
- スピーナムランドの時代に市場ユートピアと経済的自由主義が形成された。
- 劣等処遇の原則
- 悪魔のひき臼
- 人間を群衆へと引き砕いたもの。
- 国家の政策による共同体社会の解体。
- マルクスの本源的蓄積からの展開を思い出す。
- アリストテレスの経済倫理
- 岩井克人の本と問題意識が共通してる
- 経済はあくまで道具!よりよい生活を実現するのが本道。
- 互酬・再分配・交換
2025-05-15
- 良い自由と悪い自由
- 良い自由とは市民的自由
- 悪い自由は、道徳からの自由(現代のアメリカとか)
- ウィークエンドノートってなんだ #asklist
- 機能的民主主義
- 比較的小規模な有限な共同体(地方自治体、労働組合生産者協同組合文化団体)のレヴェルで、諸個人間の協力を必要とする機能(生産する、消費する、居住する)を組織し、このような諸共同体からなる社会への働きかけを意味しているp245
- ミュニシパリズムだ。
- 複雑さの縮減
- 縮減というとルーマンっぽさがある。
2025-05-16
- 商品擬制
- 労働や土地、貨幣など、本来商品でないものを、市場に包摂すること
- 7つの安いモノから見る世界の歴史でも、これらが安い商品として流通することが悪影響をもたらしていると書いていたような気がする。未読なので詳しいことは分からないが。
- 二重運動論
- 19世紀を市場原理主義と社会の防衛の対決として捉えること。
- 『ポランニーの見るところ、経済的な搾取や階級対立の観点から、資本主義の歴史や制度の変化を説明するマルクス主義は、文化的破壊や社会的破局の悲惨さを理解し、分析する用具や思想を書くという致命的な弱点を抱えているために経済的自由主義の論法に対抗することができなかった。』p105
- 文化的破局
- 民主主義はなぜ信頼を失ったのか?
- モンペルラン協会
- 民主主義vs資本主義