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フェイクニュースを哲学する

書誌情報

title: フェイクニュースを哲学する (フェイクニュースヲテツガクスル)
author: 山田圭一
publisher: 岩波書店
publish: 2024-09-24

紹介

他人の言葉、うわさ、専門家の発言、マスメディアの報じるニュース、ネット発のニュース、あるいは陰謀論……、私たちは瞬時に莫大な情報を手にする一方、時に何を信じたらいいのか、わからなくなってしまう。本書では、「知る」ことを哲学的に考察し、「真理を多く、誤りを少なく」知るための方法、そしてその意味を問う。

目次

まえがき

序 章 フェイクニュースとは何か
 新たな事態が生じている
 真実か否か
 正直か否か
 定義ではない明確化
 なぜ問題なのか
 真理の価値って何だろう
 真理を気にかけることの価値

第1章 他人の言っていることを信じてもよいのか
 リアルとネット
 確かなものって何だろう
 可謬主義と不可謬主義
 証言の認識論
 証言だけでは不十分(還元主義)
 証言だけで十分(非還元主義)
 認識的な自律と依存
 特定の証言を信頼する条件
 聞き手は何をすべきか
 ネット空間での人格の同一性
 モニタリングができないネット空間
 政治的な動機
 経済的な動機
 面白がらせたいという動機
 評価可能な能力条件とは
 ネットの証言を取り巻く不透明さ
 認識目標の再点検

第2章 うわさは信じてよいものか
 信じてはいけないものの代表?
 うわさとは何か
 オルポートの実験
 認知的な歪み
 うわさは信じてもよい(コーディの反論)
 判断を保留する意味
 ネット上のうわさは信じてよいのか
 ワンクリックで伝わる功と罪
 再投稿における保証
 情報源の信頼性に対するリスク
 理解と納得の共有
 感情の正当化と共有
 うわさ話を楽しむ
 自由の制限
 うわさを楽しむ条件

第3章 どの専門家を信じればよいのか
 専門家不信
 専門知についての三つの困難
 論証の仕方
 過去の証言の記録
 利害関心とバイアス
 同意する専門家の多さ
 信念形成ルートの独立性
 メタ専門家による同意
 他の専門家による査定
 査読制度
 認識の基礎としての制度
 困難をどう克服するか
 知的な謙虚さ
 専門家への信頼は取り戻せるか

第4章 マスメディアはネットよりも信じられるのか
 インターネットメディアの登場
 情報の門番
 マスメディアの理想と現実
 査読制度との類比は成り立つか
 マスメディアを信頼する根拠
 信頼性への反論
 メディアの評価の細分化
 陪審制度との類比は成り立つか
 証言選別の妥当性
 多様性の認識的価値
 インターネットのフィルタリング問題
 フィルターバブルの認識論
 エコーチェンバーの認識論
 認識バブルに陥らないために

第5章 陰謀論を信じてはいけないのか
 ポパー、そしてピグデンの考える「陰謀論
 不合理ではない 社会における開放性
 歴史学の陰謀論
 心理学の陰謀論
 カッサムによる批判
 知識を失わせる
 政治的プロパガンダ
 反証不可能性
 三つの対処法

終 章 真偽への関心は失われていくのか

あとがき
 参考文献

読書メモ

第1章 他人の言っていることを信じてもよいのか

第二章うわさは信じてよいものか

  1. ==豊川信用金庫事件==は女子高生の噂から始まった.
  1. うわさとはなにか

  2. オルポート、ポストマンの==デマの心理学==

  1. デマの心理学ではうわさはどのように定義されているか

  2. 松田美佐のうわさの定義は?

  3. 本書のうわさの定義は?

  4. オルポートの実験について概説せよ

  5. オルポートの実験の結果は?

  6. 哲学者のコーディはうわさを信じてもよいとする。それはなぜか。

  7. ==ピュロン派==の懐疑主義(古代懐疑主義入門を参照せよ)

  1. ネット上のうわさは信じてよいのか?

  2. 文脈の崩壊とはなにか

  3. ネット上のうわさと現実のうわさの違いを説明せよ。

  4. 再投稿において、証言の保証の所在はしばしば不明確になる。なぜか?

  5. うわさの目的は事実の伝達ではないと考える研究者がいる。それは誰か?::タモツ・シブタニ

  1. タモツ・シブタニのうわさの定義は?

  2. うわさを広める原動力としての納得とはなにか?

  3. オルポートがうわさをやり取りする動機としてあげているものは?::感情。

  1. うわさ話が、内在的な価値を持つことがある。それはどんな場合か?

  2. 他者に迷惑がかからないならば、自由は制限されない。これを==他者危害の原則==という。

  1. ネット上のうわさがもたらす危害は予測しづらい。なぜか?
  1. オルポートの法則は?

  2. ロスノウはなんといった?

第三章どの専門家を信じればよいのか

  • 専門家を信じない人々
  • ハードウィグの意見とは?
  • 専門家についての3つの困難 ゴールドマン
    • 結論を導く際に依拠している
    • 前提と結論の間の支持関係を、非専門家が評価できない
    • 反証に非専門家は馴染みがない
  • 論証の仕方について
    • 直接的な正当化
    • 間接的な正当化で非専門家は専門家を評価できる
  • 過去の証言の記録とは?
  • 利害関係やバイアスの有無
  • 同意する専門家の多さ。これは微妙だ。
    • 異なる因果ルートでの論証
    • 追試。科学者コミュニティ内での批判的吟味
  • コーディにいうメタ専門家の同意とは?
  • 査読制度擁護。
    • 査読制度のしんらいせいを毀損した事件を2つあげよ
  • 社会認識論とはなにか?
  • 知的に自律しているとはどういうことか?
  • 逆に、知的に隷属している人とは?
  • トム・ニコルズの本でとりあげられたのは?

第四章 マスメディアはネットより信じられるのか

  • マスメディアは情報を濾過する==フィルター==といえる.
  • マスメディアによるフィルタリングを検閲とみなす研究者は?::ポズナー.
  • ゴールドマンはぽずなーによるマスメディア検閲論に対する反論として、査読制度と陪審制度を例に上げている。その核心はなにか::真理を多く、誤りを少なくという目標に資するから.
  • コーディによるゴールドマンに対する反論は?
  • 査読とジャーナリストによる情報の精査はおなじものといえるのか?
  • 著者(山田圭一)がジャーナリストを信頼する根拠はなにか?
  • 上にあげた根拠に対する反論をあげよ
  • メディア評価の細分化 ひとっとびにマスメディアは信頼できないという結論に飛びつくのではなく、〇〇の〇〇に関する報道は信用できないというふうに評価基準を再文化することで、活用できる余地を増やす。
  • 陪審制度との類否は成り立つのか? 公平性
  • 安易な両論併記の危険性 →歴史修正主義とサブカルチャー
  • 多様性の認識的価値について、フェミニスト認識論を絡めて説明せよ
  • フィルターバブルとエコーチェンバーの違いは?
  • 知的に公平な心とは何か?

第5章 陰謀論を信じてはいけないのか

  • ポパーの陰謀論の定義は?
  • ピグデンによる定義は?
  • コーディの陰謀論に対する評価は?::あくまでも一つの理論として扱い、検証のすえに退けたほうがいい.
  • コーディによると陰謀論を信じることは不合理ではないのはなぜか
  • 陰謀論にたいするポジティブな評価は?::情報公開を進めるインセンティブになりうる.
  • 認識的不正義における証言的不正義とはなにか?
  • 歴史学において陰謀論が不合理な説明となりうるのはなぜか?
  • 心理学者のブラザートンは陰謀論をどう特徴づけているか?
  • 心理学による陰謀論の分析の意味は?::なぜ我々が陰謀論を信じてしまうのかを心理学で説明できるから.
  • カッサムは陰謀論をどう考えているか?
  • 大文字の陰謀論と小文字の陰謀論の違いは?
  • 陰謀論が知識を失わせるとはどういうこと?
  • 陰謀論の政治的な害とは?
  • 反証不可能性とはなにか?
  • サンスティーンによる陰謀論への対処法は?
  • カッサムは陰謀論に、どう対処すべきと考えているか?::反駁・暴露・教育.
  • 認識における徳とはなんだろうか?

感想

関連ノート

認識的不正義陰謀論(中公新書)歴史修正主義とサブカルチャーフェイクニュースの生態系コンスピリチュアリティ入門認識論を社会化するフェイクニュース

脚注

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    あさだあめ

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