摩擦 アナ・ツィン(著文) - 水声社
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紹介
燃えあがる熱帯雨林のポリティクス
樹木に自らの名を刻むチェーンソーマン、軍隊とともに山頂を目指す自然愛好家、人間に大木の手入れをさせるオオミツバチ、ボルネオ島のすべての生き物を記録するダヤックの指導者……
インドネシアの南カリマンタンに拡がる美しい熱帯雨林を舞台に、あらゆる差異を抹消し地球をひとつにしようとする力学と、さまざまなアクターの偶発的な《協働》が織りなす、断片的なもののエスノグラフィ。
車輪が回転するのは道の表面と出会うからであり、宙に浮いた車輪はどこへも行くことができない。二本の棒を擦りつけると熱と光を生じさせるが、一本の棒はただの棒だ。比喩表現としての摩擦が私たちに思い起こさせるのは、異種混淆的で不均衡な出会いは、文化と権力の新たな布置へと導いてくれるということだ。(本書より)
目次
はじめに
序章
Ⅰ 繁栄
「爆弾をもってきてくれたら、この場所を吹っ飛ばしてやるのに」
第1章 資本主義のフロンティア
「彼らは身振り手振りだけで会話する」
第2章 見せかけの経済
Ⅱ 知識
「新しいアジアとアフリカを生みだそう」
第3章 〈自然〉という普遍概念とグローバル・スケール
「暗黒線」
第4章 自然を愛好すること
「この地星、このボルネオ島」
第5章 雑草性の歴史
Ⅲ 自由
「粉のなかの一本の毛」
第6章 運動
「ファシリティとインセンティブ」
第7章 協働の森
コーダ
原註
訳注
参照文献
索引
訳者あとがき
読書メモ
第五章
- この章の主題は、人間とそれ以外の種の交流
- 種の総合力の不正について、他の考えなければならないお願いします。マルチスピーシーズです。この世界の中での生き方を知ることに私たちを近づいてやるかもしれない。
人間と環境の相互作用は何か?政治生態学だと社会的慣習や政治的強制力への反応。
人間って人間以外の主の間の相互作用をこのように聞き術する1 つの方法は景観を分析と対象とすることである。
人間と森林の関係を理解する。 木材とプランテーションのモデルを脱却する。
ヒルビリー。田舎者。あ、こういう景観か。なんか地中海っぽいね。ブローデルの。作者がギャップと呼ぶものは何か?強力な境界線がうまくトラベルすることができない。概念的な空間や実在する場所のことである。
感想
『摩擦』の第四章から第五章の半ばまで読みすすめた。第四章の主役は「自然愛好家」。日本でいう山岳部やキャンプ系のサークルのような、アウトドア活動を行う大学のサークルの総称だ。彼らは手付かずの自然を称賛し、そこに身をおくことにロマンを見出す。これは西洋(本の中では、エマソンやフンボルトがあげられていた)の自然に対する態度を輸入したものだと作者は指摘する。では彼ら自然愛好家はインドネシアの枠を飛び越したコスモポリタンなのか?それも違う。初期はノンポリな学生サークルとして活動していた彼らも、登山の技術を吸収したいと考える軍隊との協働を繰り返していく中、ナショナリズムにからめとられていく。他方で、学生時代の「自然愛好家」活動から、環境保護に目覚め、NGOを組織して国際的に活動するものも現れる。自然への関心はグローバルなものであったとしても、その実際の活動というのは、ローカルな文脈によっていろいろな生成変化をとげる。その次の4章と5章にはさまれた幕間(画像)では、現地の友人ウマ・ヤダンとともに作った、ボルネオ島の生物のリストに焦点が当てられる。現地の日常生活のなかにみられる生物多様性を、現地の人間と外国人が一緒に記録する。そしてそれを世界に発信する。グローバルとローカルの相互作用のからまり。これがこの本のメインテーマだとここまで読んでわかりました。遅い……
ちなみに画像のリストはキノコですが、作者はこの本の10年後にマツタケに関する本を書きました。こちらも面白いです。