暴政
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もう少し改善の余地があります。
書誌情報
title: 暴政
20世紀の歴史に学ぶ20のレッスン
author: ティモシー・スナイダー, 池田年穂
publisher: 慶應義塾大学出版会
publish: 2017/07/25
内容
政治においては、 騙された、というのは 言い訳にはならない。ファシストは日々の暮らしのささやかな〈真実〉を軽蔑し、 新しい宗教のように響き渡る〈スローガン〉を愛し、 歴史やジャーナリズムよりも、つくられた〈神話〉を好んだ。
- プロローグ◆歴史と暴政
1 忖度による服従はするな
2 組織や制度を守れ
3 一党独裁国家に気をつけよ
4 シンボルに責任を持て
5 職業倫理を忘れるな
6 準軍事組織には警戒せよ
7 武器を携行するに際しては思慮深くあれ
8 自分の意志を貫け
9 自分の言葉を大切にしよう
10 真実があるのを信ぜよ
11 自分で調べよ
12 アイコンタクトとちょっとした会話を怠るな
13 「リアル」な世界で政治を実践しよう
14 きちんとした私生活を持とう
15 大義名分には寄付せよ
16 他の国の仲間から学べ
17 危険な言葉には耳をそばだてよ
18 想定外のことが起きても平静さを保て
19 愛国者ペイトリオットたれ
20 勇気をふりしぼれ
エピローグ◆歴史と自由
解説 国末憲人
訳者あとがき
慶應義塾大学出版会 | 暴政 | ティモシー・スナイダー 池田年穂 より引用
読書メモ
2025-08-07
- 1 忖度による服従はするな。
- 自発的な服従のせいで、指導者は思ったより楽にことが進むと考える
- ナチスの事例
- いちはやくナチ体制に順応した市民のしたこと
- 1938年、オーストリア
- ポグロム、ホロコースト
- ミルグラムの実験
- 💭これはちょっと怪しいやつだっけ?
- 2 組織や制度を守れ
- 制度は簡単に変えられないという思い込み
- 1933年のドイツ国民、知識層はそう考えていた。
- 実際は、その次の年までには一党独裁制が確立
- 組織、制度を変えることはおもったより簡単
- 💭まぁ郵政民営化、内閣人事局、大学法人化、学術会議など、我が国にも実例はおわしますな。
- 制度は簡単に変えられないという思い込み
- 3 一党独裁国家に気をつけよ
「不断の警戒は自由の代償だ」 p.23
- ともすれば、自分で独裁者をつくりたくなる自国民への警戒
- ファシスト、ナチス、共産主義者の方法
- 選挙での好結果から、反対者を分断、殲滅していくという流れ
- よく考えられた投票が大事だね。
- この選挙が、自分が行使できる最後の選挙権かもしれないという想像力。
- 政治的運動への献金は言論の自由なのか?
- 言論の自由(修正第一条)
- 超富裕層のちからを強力にするだけではないか?
- 定期的な選挙の実施の重要さ
- ロシア1990,チェコスロバキア1946、 そしてドイツ1932
- これらは暴政の始まり
- 選挙制度への監視。例えばゲリマンダーとか。
- 4 シンボルに責任を持て
- 国旗やマークなどわかりやすいものだけではない
- ジェスチャーやことばづかいも含む
- シンボルによる非人間化
- ソ連のポスターにおける富農=豚の表象
- ダビデの星
- チェコスロバキアにおける、店頭での「万国の労働者よ、団結せよ」という掲示
- 国旗やマークなどわかりやすいものだけではない
- 5 職業倫理を忘れるな
- 法曹家が、医師が、ナチスへの協力を断っていれば?
- 専門家集団というアクターの社会での役割
- 💭STSやELSIの議論とも接続できそう。
- 6 準軍事組織には警戒せよ
- 国家による暴力の専有
- これにを毀損するための準軍事組織。
- ルーマニア「鉄衛団」、ハンガリー「矢十字団」ナチス「突撃隊」
- 恐怖による政敵の排除
- 💭そろそろ橙シャツ隊にも名前がつくのかな?
- アメリカの大統領選(2016)にも似たような光景が。
- 💭議事堂襲撃(2021だっけ?)
- 国家による暴力の専有
- 7 武器を携行するに際しては思慮深くあれ
- 💭日本で武器を携行するひとってけっこう限られてないか?
- 警察官とか。わが府の「土人」警察官とかね。
- 扱われる事例はソ連1937-1938やナチス1941-1945ホロコースト。
- ホロコーストは必ずしもアウシュヴィッツで行われているものではなく、東ヨーロッパのそこいらで、アインザッツグルッペンや警察官による銃殺として行われていた。
- 殺害数は警察官のほうが多かったとのこと
- 💭日本で武器を携行するひとってけっこう限られてないか?
- 8 自分の意志を貫け
- チャーチルの事例
- ほぼ孤立無援の状況で、イギリスは粘り続けた。
- その結果、ソ連、アメリカの参戦もあって、ドイツ相手に逆転。
- ほぼ孤立無援の状況で、イギリスは粘り続けた。
- テレサ・プレケロヴァの事例
- ポーランド人。ワルシャワのゲットーからユダヤ人を救出した。戦後はホロコースト史家になった。
- チャーチルの事例
- 9 自分の言葉を大切にしよう
- ヴィクトール・クレンペラーの考察。
ヒトラーの使う言葉が、正当な対立する概念を寄せつけない p.55
- 💭ここの例はあまり意味がわからなかった。あらゆるものごとを自分たちと敵のたたかいのなかに位置づけるレトリックということでいいのか?
- 💭日本をなめるな!
- クリシェの連呼による政治(ワンフレーズポリティクス)
- なんとなく同意するようになる(単純接触効果)
- テレビ、パソコン、スマホをやめ本を読もう。
- 💭自分のペースで物事を吟味することの大切さ。
- おすすめ小説
- ドストエフスキー『カラマーゾフの兄弟』
- フィリップ・ロス『プロット・アゲンスト・アメリカ』など
- おすすめノンフィクション
- ブラウニングの『普通の人びと』
- アレントの『全体主義の起源』
- トニー・ジャットの『知識人の責任』など
- ヴィクトール・クレンペラーの考察。
2025-08-08
- 10 真実があるのを信ぜよ
- 真実を消し去る4つの方法
- 嘘を堂々と主張する
- 💭ブルシット(でたらめ)に近いか?
- オルタナティブな現実をつくる
- 同じ言葉の繰り返し
- 💭上で見たワンフレーズポリティクスもそうだな。
- 同じフレーズを共有することで、一体感を生み出す効果もある。
- 一貫性の放棄
- 矛盾をてらいもなく一緒くたにすること p.62
- 💭財源を無視した八方美人のマニフェストとかが思い当たる
信仰と言ってもよい信頼 p.64
- 💭適切な言い換えが思いつかなかったので、そのまま引用
- 指導者のわるいところを見えなくする煙幕か。
- ルーマニアの劇作家イヨネスコ(演劇『犀』の作者)の述懐
- ナチに同意していないものの集まりだったにも関わらず、少しの同意が引き金となって、ナチスに組み込まれていく。 p.65
- 基本的にナチには反対。しかしユダヤ人政策では認めるべきところも……といいだすと、ちょっとあとには立派なナチになっている。
- 💭このようなフレーズはよく見る。
- 💭一方で、政策に対して是々非々で対応するのは悪いことではないのでは?という感じがする。
- ナチに同意していないものの集まりだったにも関わらず、少しの同意が引き金となって、ナチスに組み込まれていく。 p.65
- 嘘を堂々と主張する
- 💭感情の満足を、現実を見ることより優先したら終わりだな。
- 💭真実の反対はもう一つの真実的な相対主義も、ここへの一丁目一番地なのかも。
「ポスト・トゥルース」とは「ファシズム前夜(ルビ:プレファシズム)」のことなのです。 p.67
- 真実を消し去る4つの方法
- 11 自分で調べよ
- 💭ちょっとひっかかる章がきた。自分で調べる云々は陰謀論の入口だと思っているのだが。
- 世間でいわれるところのオールド・メディアの価値を再確認。
- 新聞を取ろう。
- インターネット上のプロパガンダへの警鐘。
- 💭ここらへんは東ヨーロッパ研究のひとらしい。
- 真実に対する冷笑は、暴君を利する。
何につけてもシニカルでいれば、(他の市民たちと一緒に無関心という泥沼にはまっていくときでさえ)自分は最新の情報に通じているし、既成のものに囚われていないと感じることができるのです。 p.69
- 💭耳が痛いひともいるのでは。
- ひとは断片化されたリアリティーショーに流れる
- 💭キャラ第一主義みたいなのは万国共通だな。
- 調査報道にかかるコストを侮るな。
- このあたりはフェイクニュースの生態系でも言及されていた。
- 自由に発言できる権利は貴重
- 💭力なき者たちの力重要文献だな
- 12 アイコンタクトとちょっとした会話を怠るな
- 告発が当然となり、信頼が毀損された社会でなしうること。
- イタリア1920s,ナチス・ドイツ1930s、ソ連1937-38.そして、共産体制下の東ヨーロッパ1940-50s
- なんてことのない挨拶が人間関係を破壊しようとする圧力への対抗策へ
- 13 「リアル」な世界で政治を実践しよう
- ポーランドの連帯 1980-81
- 💭こんなところでも自主管理労組!
- 抵抗に必要なこと。それは他者とともに行うこと。
- 最終的な舞台は路上であり、広場である
- 古代ギリシアのアゴーラ
- 路上のデモを想起せよ。
- 💭もちろん、そこからの排除もありうる 表現の自由 「政治的中立性」を問うはまさに、公共空間からのデモの締め出しが論点となっていた。
- 💭路上での困難。たとえばフェミニズムデモにおける、デモ内での差別、無意識に忍び寄る性役割はフェミニスト・シティにくわしかった。
- ポーランドの連帯 1980-81
- 14 きちんとした私生活を持とう
- 私生活があっての公共の場での行動
- アーレントの全体主義の定義
- 公的生活と私生活との境目をなくすこと p.85
- 💭あげられているのはヒラリーのメール公開事件だったか?
- 💭多分そうだな。🌱でまさはるスレが乱立していたころを思い出す。
- 私たちが内密なものに貪欲であるのは、危ういほど政治的なこと p.86
- 公開された事実ではなく、隠された真実を!
- これが陰謀論への入り口?
- 公開された事実ではなく、隠された真実を!
- 15 大義名分には寄付せよ
- 自由とは?
- 個人と国家の対立
- いや、個人ではなく、仲間を持つことができる
- 意義のある行動で仲間を増やそう
- シビルソサエティをともにつくりあげること。
- 個人と国家の対立
- 共産主義、ファシストはこういった活動を弾圧した
- 共産主義→登録制にして首輪をつけようとする
- ファシスト→コーポラティズム
- 自由とは?
- 16 他の国の仲間から学べ
- アメリカのジャーナリストの過ち
- それは楽観的すぎたこと。
- 東ヨーロッパ研究をしているひとからすると、あまりにも非現実的な見方だった
- 特に「サイバー戦争」
- 💭ロシアの選挙介入は我が国でも指摘されている。
- アメリカのジャーナリストの過ち
- 17 危険な言葉には耳をそばだてよ
- カール・シュミットのファシスト支配に関する洞察
- あらゆる規則を破壊する方法は、「例外」という考えに焦点をあてることである。 p.98
- 例外状態を口実に、強権を導入し、なし崩しにそのまますすめる。
- 💭アガンベンがコロナのときに危惧したことでもある
- 安全と自由はトレードオフ……という偽りの二項対立をせまる
- カール・シュミットのファシスト支配に関する洞察
- 18 想定外のことが起きても平静さを保て
- ドイツ国会議事堂放火事件
- 1933年2月27日午後9時
- 非常事態として、拘禁の許可や国民の基本的権利の停止などを行う
- 3/5選挙で勝利
- 3/22全権委任法成立
- プーチンの対チェチェンテロ闘争
- 💭便所まで追い詰めるはネットミームにもなってたな。
- 国外でも、テロを利用し独仏の政治を不安定化させようとしている。
- 19 愛国者ペイトリオットたれ
- ペイトリオットとナショナリストのちがい
- トランプはナショナリスト、ナショナリストは審美的にも、、倫理的にも、なんら普遍的な価値観を持たない ダニロ・キシュ 原典は不明 p.112
- 現実にある自国を愛しているわけではない
- 💭妄想の中の愛国
- ペイトリオットは理想に沿って生きること
- 「ここじゃそんなことはおきない」vs「ここでも起こりうるだろうけど、私たちはそれを止めなければならない」p.112-113
- ペイトリオットとナショナリストのちがい
- 20 勇気をふりしぼれ
- 💭そのとおり
感想
『暴政』書評──参院選後の日本、ポピュリズムから民主主義を守るには
まえおき
ティモシー・スナイダーの『暴政』を読み直した。これを買ったのは第一次トランプ政権成立時だったか?トニー・ジャット、ティモシー・スナイダー推しの友人がいたので、名前に親しみがあった、位の理由で買ったんだと思う。そのときはあまり刺さらなかったが、いま読みかえすと違った感想になった。ポピュリズムの蔓延する、参院選後の混迷した状況を生きるうえで、この感想が役に立ったら嬉しい。
暴政は足元からやってくる。
われわれのなかには、強い支配者に服従して、楽になりたいという欲望があるとおもう。だがこの本では、そのような誘惑に屈することは当然みとめられない。自発的な服従の先にあるは、ホロコースト、それもアウシュヴィッツに象徴される強制収容所ではなく、東欧の路上で「普通の人びと」によっておこなわれたものである。
「不断の警戒は自由の代償だ」
ティモシー・スナイダー『暴政』慶應義塾大学出版会 2017 p.23
ロシア、チェコスロバキア、ドイツで起きたことからスナイダーがみちびきだした教訓は「勝利ののちに反対者を分断・殲滅する」という手口だ。
アメリカにおけるゲリマンダリング(自党に有利な選挙区の区割り)であったり、日本における選挙制度ハックの問題。こういったものを見過ごしていると、選挙という制度はまもなく意味をなさなくなるのではないだろうか。投票は「たぶん最後ではない」が、「たぶん最後かもしれない」と想像するくらいがちょうどいいのかもしれない。
空虚ではない誇りをもつ。
自分たちの誇りというものはどこからくるのだろう。それは生まれでも、先祖がしたことでもないだろう。自分の職業倫理を守ることであったり、自国の政治や歴史に向き合うことからえられる誇りもあるのではなかろうか。
職業倫理は最後の砦だ。もし医師が署名を拒み、法曹が違法を告発し、完了が従っていなければ、ホロコーストは起きなかったかもしれない。専門家集団が、その職業倫理を貫徹するのには勇気が必要だ。また専門団体が出す声明は、一つだけ取ってみればたいしたことがないようにも見えよう。しかし、民主主義の足元は、こういう意地で維持されている。
スナイダーは、愛国(パトリオティズム)とナショナリズムを分けようとよびかけている。いわく、ナショナリズムは現実の共同体ではなく、ただ権力や勝利を愛しているだけだと。
ナショナリストは審美的にも、、倫理的にも、なんら普遍的な価値観を持たない
上述 p.112(小説家のダニロ・キシュが述べていた言葉らしい。原典は不明)
対象的に、パトリオティズムとは自国の現実をうけとめ、それを理想に沿って正すために生きることだ。
本物の文章を読む
ヴィクトール・クレンペラーによると、ヒトラーの言葉は対立概念を締め出すらしい。正直よくわかっていないが、自分なりに整理すると、どうも世界を敵/味方、加害者/被害者に分断し、自分を右側におくようなレトリックを意味するようだ。またスナイダーは、アメリカの政治状況について、ワンフレーズポリティクスやレッテル貼りの濫用を指摘している。果たしてこれは2016年のアメリカ大統領選だけの話だろうか? 2025の日本の分析としても通用するのではないか?「日本をなめるな!」の連呼によって、外国人政策以外は、いつのまにか政策議論の対象からつまみだされた。
また、トランプの選挙戦で多く見られる、真実の価値を貶めるやりかたにも、作者は注意を促している。そのやり口は4つ——大声の嘘、同じ言葉の反復、一貫性の放棄、指導者への信仰だ。最初のそれは、真実と違ったことをいう「嘘」や、真実と違っているかどうかさえ気にしない「ブルシット」(でたらめ)による、 もう一つの現実 オルタナティブファクト の創出である。二番目のそれは同じ用語を支持者と共有・反復することで仲間意識を醸成する。3つめは、矛盾をもろともせず抱き合わせた嘘である。減税しながら国防にも支出を増やすようなことができると主張するのはこれにあたる。そして最後は、指導者への宗教的といってもいい信頼である。過去のどんな馬鹿げた発言が明らかになろうとも、支持をやめない人たち。この光景、あきるほど見たことがあるのではないか?
「ポスト・トゥルース」とは「 ファシズム前夜 プレファシズム 」のことなのです。
上述 p.67
では、どうすればよいのか。アドバイスは単純だ。スクリーンを消して本をひらく。ショート動画の速度ではなく、自分の速度で読むことで情報を咀嚼する。
スナイダーのおすすめ作品リスト
全体主義の起原1 新版――反ユダヤ主義 全体主義の起原 新版
リストは一例。詳細を知りたい方はは『暴政』のp.58-59を参照してほしい
新聞にあたるのもよい。作者は、1取材というコストの高い行為を代わりに行ってくれる、2ジャーナリズムというある程度信頼のおける職業倫理をもつという点において、いわゆるオールドメディアを評価している。
真実はひとそれぞれ、というような冷笑的な態度は厳に戒められる。
何につけてもシニカルでいれば、(他の市民たちと一緒に無関心という泥沼にはまっていくときでさえ)自分は最新の情報に通じているし、既成のものに囚われていないと感じることができるのです。
上述 p.69
終わりある(かもしれない)現実をいきる
監視社会では、アイコンタクトと短い会話が社会の防波堤になる。挨拶は、互いを匿名にしないという宣言だ。密告が日常になる前に、名前を呼び、立ち話をする。イタリアの1920年代、ナチス・ドイツの1930年代、ソ連の大粛清期、東欧の共産体制下——どれも顔を見ない社会だった。
「リアル」な世界で政治をするというのは、広場や路上にでるということだ。ポーランドの連帯は自主管理労組として、路上と工場でつながりをつくった。デモは波風立てたくない側からは嫌われる。
この本では、公共空間からどのように政治的なものが排除されてきたかが知れる。
私生活を整える。暴政は公私の境界を溶かすからだ。アーレントが言ったように、公的生活と私生活の境目が消えると、社会は全体主義へすべりやすい。私たちが「内密なもの」に惹かれる気持ちは政治的だ。隠された真実への渇きは、陰謀論の呼び水かもしれない。
ティモシー・スナイダーは東ヨーロッパの研究者なので、「サイバー戦争」、ロシアの選挙介入をリアルなものとして受け取っているのが印象的だった。正直自分は「こんなチマチマしたネット工作なんてほんとにやるの?」くらいの立ち位置だったが、あまりに楽観的すぎるのかも。
あらゆる規則を破壊する方法は、「例外」という考えに焦点をあてることである。 p.98
上述 p.98(カール・シュミットの著作の引用だそうだ。孫引き失礼)
「例外」を口実に強権を成立させ、それを常態化する。コロナ禍でアガンベンが危惧していたのはこういうことなのかと膝を打った。「安全のためには、自由を手放さざるをえない」という二者択一(おおむね偽りの)に流される。ドイツ国会議事堂放火事件はその極致ともいえる出来事だった。
おしまい
最後に、勇気。英雄的な一瞬ではなく、毎日の小さな選択の勇気だ。忖度を断り、手続きを守り、記録を残し、反対意見を消さず、弱い立場の声を増幅する。感情の快楽より事実の確認をえらぶ。そういう退屈な作法を続けることが、斜面の足もとを固めるいちばんの方法だ。
コメント
『暴政』書評──参院選後の日本、ポピュリズムから民主主義を守るには|asadaame-the-third