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誰のために法は生まれた

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書誌情報

title: 誰のために法は生まれた
author: 木庭顕
publisher: 朝日出版社
publish: 2018-07
cover: http://books.google.com/books/content?id=UYd5uQEACAAJ&printsec=frontcover&img=1&zoom=1&source=gbs_api
created: 2022-09-26

出版社内容情報

追いつめられた一人を守るもの。
それが法とデモクラシーの基(もと)なんだ。

替えのきく人間なんて一人もいない――
問題を鋭く見つめ、格闘した紀元前ギリシャ・ローマの人たち。
彼らが残した古典作品を深く読み解き、すべてを貫く原理を取り出してくる。
この授業で大切なことは、感じること、想像力を研ぎ澄ませること。

【最先端の知は、こんなにも愉快だ! 中高生と語り合った5日間の記録】

映画を観たり戯曲を読んだりのあと、中高生との対話がはじまる。
さぁ、本当の勉強をはじめよう。
「教養どころじゃなく、自分の価値観とか、ぜんぜん、すごい変わる授業」
「人生の大事な一部分になりました」――生徒

自由な言葉とはなにか、それはどのようにすれば機能するかをギリシャの人たちはとことん考えていた。われわれのように、憲法があるから、表現の自由で、言葉は自由だ、って、もうそこで考えを止めちゃって、ああ、自由だ自由だ、自由なはずでしょ、とかは、流石にギリシャの人たちは考えない。実質、言葉の自由が、どうしたら社会の中で実際に実現して、本当に自由なのか、この作品ばかりじゃなくて、いろんな作品にとことん書いてある。そしてこの場合も、ここでできあがった信頼関係は、新しい人間関係を作っている。新しい組織原理になって全体を解体して、ぜんぶ塗り替えちゃう。
――第四回(紀元前五世紀のギリシャ悲劇「フィロクテーテース」)より

第一回 法はどちらの側にある?――『近松物語』
第二回 個人と集団を分けるもの――『自転車泥棒』
第三回 徒党解体のマジック――プラウトゥスの喜劇
第四回 見捨てられた一人のためにのみ、連帯(政治、あるいはデモクラシー)は成り立つ――ソフォクレスの悲劇
種明かしのミニレクチャー
1 政治
2 都市と領域
3 デモクラシー
4 法または占有原理
第五回 日本社会のリアル、でも問題は同じだ!――現代の判例

木庭顕[コバアキラ]
著・文・その他

内容説明

追いつめられた、たった一人を守るもの。それが法とデモクラシーの基なんだ。替えのきく人間なんて一人もいない―問題を鋭く見つめ、格闘した紀元前ギリシャ・ローマの人たち。彼らが残した古典作品を深く読み解き、すべてを貫く原理を取り出してくる。この授業で大切なことは、感じること、想像力を研ぎ澄ませること。最先端の知は、こんなにも愉快だ!中高生と語り合った5日間の記録。

目次

第1回 法はどちらの側にある?―『近松物語』(『近松物語』あらすじ;以春とおさんの結婚 ほか)

  • 大経師と岐阜屋の、集団同士がグルになっているという関係。
    • この関係性は金銭だけでなく、物や人(女性が典型的)の継続的な交換(エシャンジュ)で成り立っている。
      • 不透明な取引。
    • 集団のために、成員に犠牲を強いる家長がいる。
      • おさん、お玉、茂兵衛への苛烈な仕打ち。
        • 集団内での地位を争うためのポトラッチ。
  • これと対抗関係にあるのが、茂兵衛そのひと
    • おさんやお玉のことを家財としてみない。個人として尊重する。
    • 彼は助右衛門?とグルになることを拒む
    • また、かれは帳簿を扱う役職にいる。
      • 信頼の世界観にいる。
  • 近松物語のキモは、逃げ場を失ったおさんと茂兵衛が、心中しなかったことだ。
    • どちらかが、片方を助けるために死ぬということは、存続のために犠牲を出すことを強いる「グル」の構造と同じ。
  • 本来の法のあり方とは。
    • 徒党を解体することで、追い詰められた一人の味方をすること。
  • 古典はなぜ重要なのか
    • 古典は、その時代の社会構造が内包する問題をもっとも鋭敏にとらえている。そしてそれを劇的な形で表現している。
  • この章は桑原朝子の研究に依拠しているようだ。
  • 信頼の世界と徒党の世界はどう違うのか #asklist

第2回 個人と集団を分けるもの―『自転車泥棒』(『自転車泥棒』あらすじ;二つの光景 ほか)

  • キーワードは占有
    • 社会が占有という原理を装備しているかどうかで、質がかわる(p124)
    • 所有ではない。
    • ローマ法の、概念
    • 主体とものとの関わりの質を見る。
    • 質の高い側に占有を認める。
    • 民事訴訟は占有者と、その占有が認められないと主張するものの戦い
      • おのおのの言い分を聴いて沙汰を下すというイメージとはちがうね。
  • 自転車泥棒の読解
    • 自転車の所有の質の違い
      • 泥棒にとっては?
        • 役に立たない
      • アントニオとブルーノにとっては?
        • 仕事に必須
    • なぜ自転車を取り返せないのか
      • 取り返す相手がわからない。
      • グルだから。
        • アントニオたちは徒党を組まない(組んでもすぐ解散する)
    • 演劇の人たち(バヨッコ)
      • 芝居は現実の関係からいったん切り離される。
      • グループとグループの対決にならないように、すぐにハケる
    • 質屋はなぜ金を貸すのか
      • 信用
        • それはモノによっても保証される(担保)
      • ものが媒介する上下関係を法は危険視する
        • 犠牲強要につながる?
    • メタシアトリカル効果
      • 第四の壁の破壊
  • bona fides ボナフィデス
    • 相互信頼、互いの尊重

第3回 徒党解体のマジック―プラウトゥスの喜劇(『カシーナ』あらすじ;近松物語との類似 ほか)

2024-10-13T15:25:04.624+09:00

今日は下読み。

2024-10-13T15:32:49.315+09:00

ローマ喜劇のカシーナとルデンス今回の主題は都市と田舎?

2024-10-13T15:35:14.238+09:00

都市はbona fidesの領域

2024-10-13T15:37:18.125+09:00

否、徒党を解体することだった。
p159-160の解釈が難しいな。注意しよう。

2024-10-13T15:39:26.876+09:00

舞台からの下降(カタバシス)

2024-10-13T15:39:46.709+09:00

p163 政治とは

2024-10-13T15:42:24.341+09:00

p164 法とは

2024-10-13T15:54:38.447+09:00

ルデンス全然見つからんと思ったら、綱引き=ルデンスらしい

  • ローマ喜劇の構造
    • 不自由な女性とかっこいい若者、切れ者の従者(奴隷)
    • 体の使用権を奪う。女性に対する力の行使。実力。
      • 実力行使、万人の万人に対する闘争からの脱却。いかにして?
    • アンペリスカとパラエストラの関係
      • 水平的連帯
      • ラブラクスとカルミデスはグル
    • ブロックすること。
      • 所有者であるラブラクスをブロックする。
        • どういう理路?
        • 政治(裁判)に持ち込む
      • 駆けつけブロック
        • 自由身分の取戻訴訟
          • 人身の自由が関わっているときは認められる。
          • 徒党から個人を守る側にのみ。
      • 連帯のタイプ
        • コミュニケーションをとる、わかり合っての連帯
        • 明確な拠り所を互いに尊重する連帯p190
          • 物証
      • ギリシャ人は信じない。徹底的に吟味するp192
      • 開かれた海。
        • 公共の空間なので
      • 主張と論拠に分けること。
        • これ自体がギリシャ人由来。

まとめると、まず法があって一旦ブロックする。そうしてから、ゆっくり政治、つまりこの場合、裁判で正義を追求する。この政治の段階では、例えば市民権で救っていく、あるいはさっきのように契約の正義で救っていく。そのポイントになるのは、こういうギリシャ的な硬い個の連帯である。だいたいそういう組み立てになっている。p193

第4回 見捨てられた一人のためにのみ、連帯(政治、あるいはデモクラシー)は成り立つ―ソフォクレスの悲劇(『アンティゴネー』あらすじ;なぜ埋葬してはいけないの? ほか)

第5回 日本社会のリアル、でも問題は同じだ!―日本の判例(占有保持請求本訴ならびに建物収去土地明渡請求反訴事件判例の抜粋;事件の発端は? ほか)

著者等紹介

木庭顕[コバアキラ]
1951年、東京に生まれる。1974年、東京大学法学部卒業。東京大学名誉教授。専門はローマ法。著書に、三部作『政治の成立』(1997年)『デモクラシーの古典的基礎』(2003年)『法存立の歴史的基盤』(2009年、日本学士院賞受賞、以上東京大学出版会)ほか(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
※書籍に掲載されている著者及び編者、訳者、監修者、イラストレーターなどの紹介情報です。

脚注

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    あさだあめ

    あさだあめ

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